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オーバーツーリズムとは?インバウンド問題の原因、ITを活用した対策を解説

近年、観光客の急増によって発生する「オーバーツーリズム」が、世界的な問題となっています。

日本においては、インバウンド需要が高まり、2018年に訪日観光客が初めて3000万人を超えました。

それによって、京都や箱根、富士山などの古くからの観光地、さらにはアニメ・映画の舞台となった地域に、多数の観光客が訪れています。

観光客の増加は良いことばかりではなく、環境破壊や交通渋滞、地域住民とのトラブルなど、さまざまな問題に直面することとなりました。

日本では「観光公害」とも呼ばれるこの問題について、政府や自治体は早急な対応を迫られています。

この記事では、オーバーツーリズムについて、その原因や問題点、IT技術を駆使した対策事例などを解説します。

オーバーツーリズムとは

まずは、オーバーツーリズムがどのような問題なのか見ていきましょう。

観光客急増によるさまざまな問題

「オーバーツーリズム(overtourism)」とは、観光地へ多数の観光客が訪れる現象、および、それによって発生する問題を指します。

この10年ほどで、移動手段の多様化やSNSの発達などによって、世界各地でオーバーツーリズムが起こっており、自然環境やインフラ、地域住民への悪影響が指摘されています。

日本では「観光公害」という用語も使われるオーバーツーリズムは、国や地域全体ではなく、観光地の特定箇所で発生するというのが大きな特徴です。

日本国内におけるオーバーツーリズムの事例としては、京都府の主要観光地や岐阜県の白川郷といった著名なものから、鎌倉市のように、アニメ・ドラマの舞台となった地域が挙げられます。

オーバーツーリズムへの対策が迫られる

オーバーツーリズムは、自然環境・地域の暮らしだけでなく、観光ビジネスにとっても大きな問題です。

キャパシティ以上の観光客が訪れることで、観光資源の枯渇や地域の悪印象につながり、持続的な観光ビジネスが不可能となってしまいます。

そのため、行政・企業はさまざまな施策を通して、オーバーツーリズムの解決に取り組んでいます。

日本国内では、平成30年に環境庁が「持続可能な観光推進本部」を設置し、全国の自治体に対して初めての大規模調査をおこない、オーバーツーリズムの実態把握に乗り出しました。

現在では、行政主導によるIT技術を用いたオーバーツーリズム対策が進められており、国内でもICTの活用やAIによる混雑予測などの事例があります。

オーバーツーリズムの原因

2016年頃に問題提起がなされたオーバーツーリズムは、どのような要因で発生しているのでしょうか。

観光客激増の主要な原因を解説します。

交通費の低下と移動手段の多様化

オーバーツーリズムの最大の原因は、交通費の低下と移動手段の多様化とされます。

日本国内では1990年代に広まった格安航空会社(LCC)の登場により、世界的に航空運賃が低下し、飛行機が手軽な移動手段となりました。

近年では飛行機やタクシーの手配から宿泊施設の予約まで、すべてデジタルで完結できるようになったことで、移動にかかるコストが低下し、世界各地で観光客が増加しているのです。

SNSの発達

オーバーツーリズムの多発には、SNSの発達が大きく関わっています。

観光地にまつわる投稿がSNSで拡散されることで、マイナーなスポットにも観光客が殺到する事例が増えています。

観光ビジネスに注力していない地域に多数の観光客が訪れ、交通渋滞や地域住民とのトラブルが多発。

加えてSNSの投稿の中には、本来は立入禁止の区域にまつわるものもあり、自然環境への被害、条例違反などの問題も指摘されています。

適切でない観光マネジメント

国内ではインバウンド需要により、観光ビジネスへ力を入れる地域も増えています。

そこで専門家の招集といった適切なマネジメントをおこなわないと、オーバーツーリズムに直面します。

地域のキャパシティ以上の観光客を呼んでしまう、地域住民への説明不足によるトラブルなど、観光マネジメントが要因で発生する問題も多いです。

このように、観光ビジネスでは、観光客を呼ぶことを優先するあまり、オーバーツーリズムを引き起こしてしまうことがあるため、適切なマネジメントが必要となります。

オーバーツーリズムの問題点

オーバーツーリズムは、自然環境やインフラ、地域住民へ多大な負担が発生します。

こうしたオーバーツーリズムの問題点について見ていきましょう。

環境破壊

オーバーツーリズムは、観光地の自然環境や遺構などにダメージを与えます。

例えば、世界遺産に登録された屋久島では、観光客が殺到したことで植物が踏み荒らされるといった環境破壊が指摘されました。

また、外国人観光客にも人気のある富士山では、観光客の出すゴミが急増、ポイ捨ても問題となりました。

海外でも、オーバーツーリズムによって遺構が破損する事例が相次いでおり、オーバーツーリズムへの対策が急務となっています。

自然環境や遺構の破壊が進むと、いずれは観光地自体が消滅し、ビジネス面でも大きな損失となります。

地域住民とのトラブル

オーバーツーリズムの問題として、地域住民とのトラブルも無視できません。

具体的には、観光客が殺到することで発生する交通渋滞や公共交通機関の混雑、観光客の騒音、ゴミの増加、不法侵入や無断撮影といったプライバシーの侵害。

さらには物価高騰、治安悪化など、数多くの問題が実際に起こっています。

こうした問題により、日常生活に支障が生じ、地域住民と観光客・自治体・観光業者が対立、観光ビジネスも立ち行かなくなってしまうのです。

日本政府・行政によるオーバーツーリズムへの対策

オーバーツーリズムは地域住民や自治体だけでは解決が難しく、政府による対応が不可欠です。

海外でも、政府主導でさまざまな対策が実施されています。

ここでは、日本政府および行政によるオーバーツーリズム対策を解説します。

「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた取組」

国内では、新型コロナウイルス感染症の流行が落ち着いたことで、インバウンド需要が復活し、オーバーツーリズム問題が再注目されるようになりました。

そこで政府は、地域住民の生活維持と観光ビジネスの成長を両立させるため、令和5年に
「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた対策パッケージ」
および
「オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業」
を発表しました。

国内の主要な観光地に対して、観光インフラの拡充や観光客の分散、観光客のマナー違反対策を打ち出しています。

「手ぶら観光」推進

関西の自治体や経済団体が参画する関西観光本部では、訪日観光客に向けて「手ぶら観光」を推進しています。

「手ぶら観光」は、キャリーケースを初めとする観光客の大きな荷物を、空港・駅などの公共交通機関、または商業施設などで預かり、指定された宿泊地まで配送するという取り組みです。

この取り組みの狙いには、訪日観光客の満足度向上や消費拡大だけでなく、オーバーツーリズムの解消も含まれています。

観光客が大きな荷物を公共交通機関に持ち運ぶ必要がなくなるため、公共交通機関の混雑が解消、さらに、身軽になった観光客が行動範囲を広げることで、特定の地域に観光客が集中する現象を回避できるといったことが期待されています。

ITを活用したオーバーツーリズム対策

オーバーツーリズム対策として、IT技術の活用が注目されています。

ここでは国内でも事例のある、ITを活用したオーバーツーリズム対策を解説します。

ICTの活用

キャッシュレス決済や位置情報といったICTを活用することで、交通機関の混雑解消が期待されています。

改札の通過や駅構内での購買にキャッシュレス決済を使用すれば、これらの行為をスムーズにおこなうことが可能です。

また、スマートフォンから位置情報を取得することで、混雑の可視化ができ、観光客の分散が期待されています。

スマートゴミ箱

オーバーツーリズムの問題のひとつに、観光地におけるゴミの激増が挙げられます。

観光地のごみ問題を解決するために考案されたのが「スマートゴミ箱」です。

ゴミ箱の内部に設置されたセンサーがゴミの量を把握し、一定量を超えると中のゴミを圧縮します。

これによって、通常のゴミ箱の5倍以上のゴミを収納できるようになります。

スマートごみ箱にはまた通信機能が備わっており、遠隔でゴミの量を把握し、効率的なゴミ収集が可能です。

スマートごみ箱は、国内では京都府の嵐山に設置された事例があります。

AIを用いた混雑予想

観光客が一か所に集中するのを防ぐため、AIと位置情報を用いた混雑状況の把握・予想が取り組まれています。

人の流れから地域の渋滞を予測するとともに、公共施設やレストランなどの混雑状況をリアルタイムで把握できるようになります。

これにより、迅速な混雑対応や観光客の分散が実現可能です。

この取り組みとして、日本では箱根の「AIデジタルマップ」が事例として挙げられます。

ライブカメラで現地の様子を把握

オーバーツーリズム解消のため、観光地の様子をライブカメラで配信し、現地の状況をリアルタイムで把握する取り組みが各地でなされています。

ライブカメラで可視化された混雑状況を、看板やWeb上で配信することで、観光客の集中を防ぐことが可能です。

また、観光客のマナー違反を抑止する効果も期待されています。

観光業界のDXならAMELAに

今回は、オーバーツーリズムについて解説してきました。

日本の観光産業は、世界でも有数の武器であり、大きなビジネスチャンスがある業界でもあります。

一方で、どうしてもDX化が進みにくい業界でもあるため、こういったオーバーツーリズムも後手後手に回っている部分が多いのが現状でしょう。

AMELAでは、業務システムや一般ユーザー向けのコンテンツなど、幅広いシステムを作成しています。

また、専任のITコンサルタントがいるため、
「なんとなくこの部分が効率が悪そうだけど、よくわからない」
という状況であっても、ヒアリングの上で最適なご提案をさせていただきます。

これからの日本を支える業界だからこそ、是非DXに本気で取り組んでいただきたいと考えています。